糖尿病 食事療法

糖尿病神経障害

糖尿病の三大合併症の最後は糖尿病神経障害です。神経障害は、三大合併症のうち最も早くから出てくる合併症です。糖尿病神経障害には、大きく分けて、「末梢神経障害」と「自律神経障害」があります。

 

 

末梢神経障害

末梢神経障害は、特に下肢のしびれ、感覚の低下、痛みなどが典型的か症状で、アキレス腱反射や膝の腱反射の低下がみられます。感覚の低下とは、痛みなどの感覚が麻庫することで、「無痛性神経障害」と呼ばれています。
この場合、足に傷を受けても痛みがないため放置してしまい、その傷が化膿してはじめて気がつくこともまれではありません。特に後で述べる「糖尿病壊疸」の重要な原因とな るため、注意が必要です。糖尿病神縁障害のための痛みは「有痛性神経障害」といかれ、ひどい場合には痛みのために夜眠れなくなることもしばしば経験されます。

 

末梢神経障害も、網膜症冲腎症同様、血糖のコントロールが悪い人に起こりやすいため、このような症状が出てきたら、これまで以上に血糖コントロールをよくするための努力が必要です。
対症療法としてビタミンB群などが使われますが、最近では「アルドース還元酵素阻害剤」という薬が試みられており、一部の患者さんには効果があるようです。

 

アルコールを多飲する人の場合は、「アルコール性神経障害」という、糖尿病神経障害とまったく同じような症状が起こることがあります。糖尿病の患者さんでこれまでお酒やビールなどを飲んでいた人は、禁酒する必要があります。

 

これまでの血糖コントロールがきわめて悪かっか人が、インスリンなどを使って急激に血糖を低下させた場合、末梢神経障害の症状が出現、あるいは悪化することがあります。
このような場合には、急激な血糖の是正はせずに、徐々にコントロールすることが肝要です。

 

 

自律神経障害

糖尿病自律神経障害の中で最も有名なのは「起立性低血圧」です。寝ているか、または座っている状態から急に立ち上がる場合、正常では下肢の血管が収縮し、上半身の血流を維持するという交感神経の反射が起こるため、血圧はほとんど低下しません。ところが自律神経障害でこの反射が障害されると、血圧が芳しく低下して脳貧血
の症状が現れます。ひどい場合には意識を失うこともあります。

 

糖尿病自律神経障害で頻度の多いものに、「胃アトニー」という病気があります。これは、胃が消化・吸収という働きをするために重要な「蠕動運動」が、やはり胃の自律神経障害のため低下してしまい、食べたものが長時間胃の中に停滞する結果、吐き気や嘔吐が続くものです。比較的若い患者さんに多く、突発的に、また周期的に起こるのが特徴です。非常につらい症状ですので、重度な場合には、鎮静剤を使うこともあります。

 

心筋梗塞は、糖尿病の患者さんの重大な合併症の一つです。通常、心筋梗塞の発作時には激しい痛みを伴いますが、この痛みが糖尿病の患者さんではまったく感じられないことがあります。これは「無痛性心筋梗塞」と呼ばれ、心臓交感神経の障害によるものと考えられています。

 

膀胱の機能が低下するのも糖尿病自律神経障害によるものです。通常、膀胱に尿がたまると尿意を感じよすが、糖尿病による神経障害が重度な人では、膀胱の神経障害のため、尿がたまっても尿意を感じなくなります。

 

また、膀胱の筋肉がうまく収縮しなくなり、排尿しても尿がたくさん膀胱に残ってしまいます(「残尿」といいます)。このような膀胱の障害を「無力性膀胱」といい、ひどい場合には、膀胱に尿が1リットル以上たまっても尿意がなく、医師の診察を受けてはじめてわかる場合もあります。

 

 

低血糖の際は、「カテコールアミン」などのホルモンが分泌されて、血糖を上げようとする防御作用が働き、これによって冷や汗、動悸、手のふるえなどを自覚します。この作用も自律神経によって調節されているため、神経障害が強い患者さんでは、そうした症状がない「無自覚低血糖」が起こることがあります。自分で低血糖と自覚できないため、突然昏睡状態となり、さらに放置されれば死を招く危険もあります。

 

さらにその他の自律神経障害としては、「インポテンス」「瞳孔異常」「発汗異常」などがあります。

 

このように、自律神経障害は多彩な症状を引き起こしますが、現時点では特効薬はありません。それぞれの症状に対して、対症療法が行われていますが、十分な改善は望めません。やはり糖尿病と診断されたら、良いコントロールをずっと維持することによって、このような自律神経障害を予防することが大切です。

 

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