糖尿病腎症
糖尿病腎症とは
腎臓は、生命を維持するうえできわめて重要な働きをしています。
からだの中で生じた血液中の老廃物は、腎臓の「糸球体」と呼ばれる構造で濾過され、尿中に排泄されます。この糸球体は、網膜症のところで述べた毛細血管の塊からなっており、やはり高血糖が長期間持続すると障害が起こります。正常では、血液中のタンパク質は濾過されませんが、腎症によって障害された毛細血管からは漏れ出てしまいます。これが「タンパク尿」です。タンパクが大量に尿から出てしまうと、血液中のタンパク質の濃度が低くなる結果、足などにむくみ(浮腫)を生じ、さらに血圧が上昇し、ついには腎不全、尿毒症といった、生命に危険を及ぼすような状態となります。
最近、糖尿病腎症から末期腎不全となり、透析を必要とする患者さんが急増しています。
糖尿病腎症の診断
腎臓は、網膜とは違って、からだの外から直接異常がないかどうかを見ることはできません。糖尿病腎症があるかどうかを正確に把握するためには、背中から細い針を刺して腎臓の組織を一部採り、顕微鏡で詳しく調べるといった検査(「腎生検」といいます)が必要となります。しかし腎生検は患者さんに対する負担が大きく、またすべての糖尿病の患者さんに行うわけにはいきません。
これまでは簡単な方法として、尿検査でタンパクを試験紙などで調べるといった方法が行われていました。ただし、この時期にはすでに腎臓の障害が進んでいるため、最近では尿タンパクの最も多い成分である「アルブミン」という物質を、精度の高い方法で検出する方法が行われています。本来、健康々人でもこのアルブミンは少量検出されますが、糖尿病の人で血糖コントロールの悪い時期が長
期間持続すると、尿中のアルブミンの量が増えてきます。まだタンパク尿が陽性になるにはいたらない時期を、「微量アルブミン尿期」といいます。この時期であれば、早期の網膜症同様、血糖をより厳格にコントロールすることによって、それ以上病気が進行するのを抑えることができます。
糖尿病腎症の治療
糖尿病腎症の治療は、その時期によって異なります。まだ微量のアルブミンすら出ていない、まったく正常の時期では、良好な血糖コントロールを維持することによって、腎症が起こるのを予防できます。網膜症のところで述べたアメリカのDCCTでは、腎症についても検討されており、やはり強化インスリン療法で血糖を良好に保つことによって、腎症の発症あるいはその進行を予防できることが示されて
います。
微量アルブミン尿期になると、さらに厳格な血糖コントロールが重要で、この時期を過ぎると往々にしてその後の巡行を食い止められなくなるといわれており、きわめて重要な時期といえます。また、この時期には、本来、高血圧の治療として用いられる「アンギオテンシン変換酵素阻害剤」という薬が、正常の血圧の人に対しても使われることがあります。
腎症がさらに進行し、タンパク尿が陽性になると、血糖のコントロールだけでは進行を抑えられません。この時期からは、食事療法の方針が従来の糖尿病食から大きく変わり、「高エネルギー低タンパク食」という腎臓食になります。最近の研究によって、腎臓の障害が進行する速度を少しでも遅くするためには、食事中のタンパク質を制限することが有効であることがわかってきました。ただし、タンパク質を制限すると、からだの中のタンパク質が分解されるため、その分を等質や脂肪で補うことになります。
高エネルギー摂取によって血糖が上昇する場合には、これまで食事療法や経口血糖降下剤で治療してきた人も、インスリン注射に変更してコントロールする必要があります。また、血圧が上昇してくる時期ですので、塩分の制限や、血圧降下剤の使用が必要となります。
さらに腎症が進行して腎不全の状態になると、血糖、血圧のコントロール、さらに腎臓食に加えて、日常生活での安静が必要となってきます。過労や過度の運動は腎臓の機能をさらに悪化させる危険があり、避けなくてはいけません。残念ですが、この時期ではもう腎臓の機能が回復することはなく、徐々に進行して、数年以内に透析が必要となるといわれています。非常につらいことですが、しっかりと自分の現状を見つめ、透析導入以降の生活設計について考え始めなくてはいけません。また、透析についての知識を医師から得るようにします。
末期腎不全になると、むくみ、息・切れ・動悸などの心不全症状、食欲低下、全身倦怠感、貧血などの症状が出てきます。そのまま放置すると呼吸困難や意識障害のため命にかかわるようになるので、透析という治療を始める必要があります。
糖尿病の患者さんでは、腎不全の比較的早期からからだに水分がたまりやすいため、血液検査からみるとまだ余裕があると思われる時期でも透析が必要となることが多く、早めの透析導入がすすめられています。患者の多くは、なるべく透析はぎりぎりになってから始めたいと希望されます。その心情はよく理解できますが、透析に入ってからのからだの調子を良く保つためには、まだ腎不全の症状がそれほどひどくない時期に透析を始めることが重要です。
透析療法の実際
透析の方法には、現在「血液透析」と「腹膜透析」の二種類があります。血液透析では、あらかじめ「シャント」という、腕の動脈と静脈を結び合わせ、静脈の血流を増加させる手術を行います。やや太めの針を二本刺し、一方の針から血液を抜き、「ダイアライザー」という器械に通すことによって血液を浄化し、また同時に余分な水分や塩分を取り除いた後に、もう一方の針からからだに返すという治療法です。一回の血液透析に4時間、これを病院あるいは診療所で週3回行うことになります。
一方、腹膜透析は、まず手術によって、おなかの中に直径7mmのカテーテルを植え込んでおいて、これを通してプラスチックバッグに入った1.5〜2リットルの透析液を注入、貯留し、腹膜を介して血液中の老廃物、水分、塩分の除去を行うものです。透析液を一日4回(朝、昼、夕、就寝前)注入、貯留、さらに俳液することによって、血液透析とぼけ同じ効果が得られます。この方法は、「連続携行式腹膜透析(CAPD)」とも呼ばれます。CAPDの操作は家庭や職場で行うことができ、通院も月に1〜2回ですみます。
両方の透析法には一長一短があり、患者さんの全身状態、日常生活様式、性格、家庭・職場環境などを総合的に考慮したうえで、いずれを行うかを、患者さんと医療スタッフとでよく相談して決めます。
腎移植について
腎不全の治療には、前項で述べた透析療法のはかに、「腎移植」があります。これには、両親あるいは兄弟などから2つある腎臓のうち一つをもらう「生体腎移植」と、亡くなった人の善意によっ〜死後提供された腎臓をもらう「死体腎移植」があります。全身麻酔のもとに、下腹部を切開し、膀胱の近くに腎臓を植えます。腎移植が成功すると、特に生体腎移植の場合には、于術中から移植した腎臓が働き、それまでほとんど出なかった尿が出るようになり、透析療法から離脱することができます。
しかし、移植された腎臓はもともと自分以外のものであり、これを拒絶しようとする免疫反応が起こるので、これを防ぐために「免疫抑制剤」という薬を飲み続ける必要があります。また免疫抑制剤の副作用として、特に移植後3ヶ月くらいまでは、肺炎などの感染症の危険があり、注意が必要です。しかし、これを過ぎると、免疫抑制剤の量も減ってくるため、感染症の危険は少なくなり、ほぼ正常の生活に戻れることになります。
一つとはいえ、移植した腎臓がからだの中で機能するわけですから、透析療法とは異なり、腎移植は腎不全の代謝異常のはとんどを改作しうる根治療法といえます。腎移植は、社会復帰などの点でも透析療法に比べて明らかに優れています。
わが国の臓器移植は欧米に比べ、立ち遅れた状況にあります。腎移植だけは、比較的早期から行われてきましたが、それでもわが国の腎移植は、欧米に比べると圧倒的に少なく、さらに糖単病の患者さんに対する腎移植は敬遠されがちです。
糖尿病腎不全の患者さんに腎移植を行う場合の問題点としては、1.糖尿病以外の患者さんに比べて全身の介併症が高頻度にみられること、2.高齢の患者さんが多いこと、3.移植後使用される免疫抑制剤によって、糖尿病の悪化が懸念されること、などがあげられます。しかしインスリン依存型糖尿病など、比較的若く、また合併症の少ない患者さんには、積極的な腎移植の推進が望まれます。
1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)に対する膵腎移植
「膵腎移植」とは、腎不全となったインスリン依存型糖尿病の患者さんに、インスリンを分泌する膵臓の移植と腎臓の移植の両方を行う治療です。これによって、患者さんはインスリン治療と透析の両方から解放されるため、劇的な生活の質の改善が期待されます。
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