糖尿病合併症の検査

糖尿病にはすでに述べたように特有の合併症があります。糖尿病と診断されたときから、これらの合併症に関連した検査をしておく必要があります。それによってい期発見、早期治療を行うことができるからです。

眼底検査

糖尿病による眼の合併症の中で最も重視されるのが眼底出血です。糖尿病が発見されたら直ちに眼底検査を受けなければなりません。それでたとえ異常がなくても、その後も年に一度は定期的に検査を受けるようにしましょう。また、もし眼底出血を指摘されたらすぐに専門の眼科医を訪れて精密検舎を受けてください。

出血が進行すると、適切な時期に光凝固療法が行われます。これはレーザー光線によって出血部位を止める治療です。光凝固をする前には、蛍光眼底検査が必要です。これは蛍光を発する物質を静脈内によ射して、網膜血管の出血部位やその周囲の状況を詳細に検討する検査です。光凝固治療は網膜出血に対する画期的な治療法で、これによって多くの人々が失明から救われています。

ただし、非常に進行してしまった網膜症には光凝固療法も効果がありません。自覚症状がないからといって眼底検査を怠ることがけっしてないように十分ご注意ください。

尿タンパク検査

尿にタンパクが出るのは腎臓の働きが低下していることを意味しますが、これが糖尿病による場合を糖尿病腎症といいます。最近では、尿タンパクよりももっと早い時期に微量アルブミンが尿中に検出されるようになりました。この時期を早期腎症といいます。腎症がより早期に診断され、早期治療が可能になったのです。

尿の微量アルブミンを測定するには、朝起きぬけに出た尿や、24時間ためた尿の一部を取り出して検査します。早期腎症の時期から血糖コントロールを良好に保ち、かつ血圧を正常に維持できれば、糖尿病腎症の進行悪化は予防できると考えられています。

神経学的検査

糖尿病末梢神経障害とは、手足の末端にしびれ感や痛みが走るものです。医師は診察で膝やかかとをハンマーで叩いて跳ね上がるかどうかを調べます。昔の人は“脚気”と思っていたようですが、実は糖尿病が10年以上続くと脚気と同じように膝を叩いても足が跳ね上がらなくなります。また、つま先の感覚が麻痺していないかどうかをみるために針先でつついて検査します。

そのほか、神経学的検査には特殊検査がたくさんあります。専門病院では振動覚検査、神経伝導速度や自律神経機能検査などがよく行われます。

動脈硬化を調べる検査

糖尿病では心筋梗塞、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患を合併する頻度が高くなります。したがって、これらの危険因子となる高脂血症や肥満度を調べたり、頸部や下肢の循環動態をよくみておく必要があります。

血液中の脂質検査としてはコレステロールや中性脂肪、ＨＤＬ－コレステロール（俗に善玉コレステロールと呼ばれている）などを測定します。

心電図はまず安静時にとってみますが、それで異常がなければ運動をして負荷を加えた状態でとってみます。糖尿病の人では、狭心症や心筋梗寒が起こっていても、まったく自覚症状がなくて気づかずにいることがあります。これはたいへん危険なことですから、必ず定期的に心電図をとってみることが大切です。

胸部レントゲン撮影では、心臓の大きさや大動脈の石灰化かあるかどうかを調べます。

また、大動脈脈波速度の検査をすると動脈硬化の程度がわかります。

下肢の循環が良好か否かは、指尖容積脈波やサーモグラフィーなどの特殊検査を行わなければなりません。

これらの請検査は各人の病状に応じて繰り返し行わなければなりません。合併症の予防と早期発見に努めるように心がけましょう。

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